企画づくり

「やらないこと」を先に決める:企画の範囲に線を引く書き出し表

 文:CROWDFUNDING SUPPORT 編集部/監修:たーなー先生(田中直人)

企画の範囲に線を引いておくと、準備も公開中の発信も、ぐっと軽くなります。

クラウドファンディングの企画は、「やること」と一緒に「今回はやらないこと」を決めておくと、ぶれずに進められます。やりたいことが多い人ほど、話を聞くうちに企画が膨らみ、目標金額も、リターンも、準備の量も増えていきます。膨らんだ企画は、伝える言葉が長くなり、読む人にも届きにくくなります。この記事では、範囲に線を引くための三つの問いと、書き出し表の使い方を、順に紹介します。

やらないことを決めると、何が楽になるのか

企画に「やらないこと」を決めると、まず迷う場面が減ります。準備の途中で「これも載せたほうがいいかな」と思いついたとき、線の外にあるなら、今回は見送るとすぐ判断できます。毎回、ゼロから悩まなくて済みます。

次に、伝える言葉がすっきりします。ページに載せる内容は、あれもこれも並べるよりも、一つの挑戦に絞ったほうが、読む人の記憶に残ります。「この企画は、この一つのためのものだ」とひと言で言えると、応援の頼み方も、お礼の言葉も揃います。

三つめは、支援者への約束が守りやすくなることです。範囲が広いと、リターンの数も、報告の内容も増え、すべてを丁寧に届けるのが難しくなります。範囲を絞れば、約束した分を確実にお届けできます。

やらないことは、あきらめることとは違います。今回の挑戦を成功させるために、力を一点に集めるという前向きな選択です。次の機会に回すものは、「次の挑戦の種」として取っておきます。

範囲に線を引く三つの問い

線を引くときは、次の三つの問いに答えていきます。

問い一:公開の日までに、手が届くか

準備は、公開したい日の九十日前から始めるのが目安です。その日までに、文章、写真、動画、音楽を準備でき、リターンも用意できる範囲か。手が届かないものは、今回の範囲から外します。

問い二:支援者に、一言で説明できるか

企画の内容が二つ以上あって一言で言えないときは、どちらか一つを中心にします。「ステージをつくる」「CDを録る」「お店を開く」のように、動詞一つで言える形が理想です。

問い三:届けると約束できる量か

リターンの種類と数、報告の回数は、公開後にも続く約束です。自分たちの人数と時間で、確実に届けられる量に収まっているかを考えます。

三つの問いのうち、一つでも「いいえ」があれば、その要素は線の外に置きます。迷う項目は、「今回は見送る」の箱に入れておき、公開後に余裕があれば報告で触れる、という扱いも選べます。

書き出し表のつくり方

頭の中だけで線を引くのは難しいので、紙かメモに書き出します。やりたいことを思いつく限り並べ、三つの問いで仕分けします。

やりたいこと公開日までに手が届く一言で言える届けると約束できる扱い
発表会の会場を整えるはいはいはい今回やる
記念の冊子をつくるはいはいはい今回やる(リターンに)
全国ツアーを開くいいえいいえいいえ今回はやらない
新しい教室を増やすいいえはいいいえ次の挑戦の種

表の項目は、実際の企画に合わせて書き換えてください。大切なのは、「はい」「いいえ」の印を付けながら、自分たちの言葉で理由を一行添えることです。「いいえ」の理由を書いておくと、あとで見返したときに、なぜ今回は見送ったのかを思い出せます。

団体で話し合うときの進め方

団体で企画をつくる場合は、書き出し表を、みんなで作ります。まず各自が、やりたいことを付箋やメモに一つずつ書き出します。次に、全部を机に並べて、同じような内容を一つにまとめます。そのあとで、三つの問いに沿って、仲間と一緒に仕分けます。

話し合いのとき、特に気をつけたいのは、誰かの「やりたい」を否定する言い方を避けることです。「それは無理」ではなく、「それは次の挑戦に取っておこう」と言い換えると、想いを大切にしたまま線を引けます。次の挑戦の種の箱に入った項目は、団体の将来の計画にもなります。

話し合いが終わったら、決まったことを一枚にまとめて、全員に共有します。「今回やること」「今回はやらないこと」「次の挑戦の種」の三つの見出しを付けるだけで構いません。この一枚が、公開中に迷ったときに立ち戻る場所になります。

線を引いたあとの、ページの書き方

範囲が決まったら、ページの文章にも反映させます。ページの冒頭で「今回の挑戦は、これです」と、一つのことを言い切りましょう。たとえば「地域の子どもたちが立てる、はじめての舞台をつくります」のように、何を、誰のために、という二点が入っていれば十分です。

次に、費用の説明も範囲に合わせます。線の内側にある項目だけで内訳を組み、目標金額を決めます。線の外にあるものの費用が混ざっていると、読む人は「この金額は何のためか」がわからなくなります。内訳の各項目に、企画の一言とのつながりが見えれば、金額の納得感が高まります。

リターンは、範囲の中で届けられるものに絞ります。種類を増やすより、一つひとつの説明を丁寧に書くほうが、選ぶ人にとって親切です。種類が少なくても、体験や地域の品など、企画の中身とつながったリターンがそろっていれば、支援の理由が伝わります。

線の外に置いた「次の挑戦の種」は、ページの最後で、少しだけ触れる使い方もあります。「この挑戦のあとに、こんな夢も育てていきたい」と一文添えると、読む人は、企画の先にある物語を想像できます。ただし、約束のように書くと負担が増えるので、あくまで夢として軽く触れる程度にとどめましょう。

公開中に「やらないこと」が助けてくれる場面

線を引いたあとの効果が、特に出るのは公開中です。支援してくれた人から、「こんなこともできますか」と提案をもらうことがあります。うれしい言葉ですが、すべてを受けると、約束が増えて負担になります。そんなとき、線があれば、「ありがとうございます。今回はこの形で進めます。ご提案は、次の挑戦の参考にします」と、前向きに返事ができます。

もうひとつは、協力の申し出が届いたときです。気持ちはありがたくても、企画の範囲を変えてしまう申し出は、受けるかどうかを慎重に考えます。範囲の線が決まっていれば、判断が早く、相手にも誠実に答えられます。

ページの内容を直したくなったときにも、線は役立ちます。新しい情報を足すたびに、読む人にとってわかりやすいかが変わります。足してもよいのは、線の内側にあるものだけ、と決めておけば、ページが膨らみすぎません。

範囲を決める作業を、一緒に進める

やりたいことを絞るのは、一人だと難しい作業です。気持ちが入っているほど、どれも大切に思えてしまうからです。クラウドファンディング支援では、ご相談の段階で挑戦したいことと時期を聞き、設計の段階で目標、リターン、見せ方を一緒に整えます。代行ではなく伴走ですから、決めるのは起案者ですが、聞き役がいることで、頭の中が整理されていきます。

やりたいことを、思いつくままに並べたメモがあれば、そのまま持ってきてください。書き出し表を一緒に埋めながら、今回の一つの挑戦を、はっきりした形にしていきます。ひとりの思いを、みんなの夢に。

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