文章の書き直し
ページの文章を一人の読み手に向けて書く:手紙のように書き直す3ステップ
大勢に向けた文章より、一人に向けた手紙のほうが、結果として多くの人の心に届きます。書き直しの手順を、例文つきで紹介します。
クラウドファンディングのページは、「応援してほしい一人」を決めて、その人に手紙を書くつもりで直すと、ぐっと伝わる文章になります。この記事では、宛先を決める、手紙の順に並べ直す、声に出して整える、という3ステップを、書き直しの例と確認表で紹介します。
「みなさまへ」の文章が届きにくい理由
下書きを書き終えたとき、全体が「みなさま」に向けた説明文になっていることがよくあります。企画の背景、目的、意義、予算と、必要な情報は並んでいるのに、読み返すと誰の心にも引っかからない。これは、書き手が「できるだけ多くの人に分かってほしい」と考えて、言葉の角を丸くしているために起こります。
読む人の側から見ると、「みなさま」宛ての文章は、自分のことではないように感じられます。逆に、「あの人にこれを伝えたい」と決めて書いた文章は、細かい事情や気持ちが入り、読む人が「自分も呼ばれている」と受け取りやすくなります。一人に向けて書いた手紙が、結果的に似た立場の多くの人の心に届く、という考え方です。
ここでの「手紙」は、形式ばった文面を指しません。相手の顔を思い浮かべて、普段の言葉で、順序立てて話しかけるということです。ページの全文を手紙の形にする必要はなく、冒頭、思いを語る部分、お願いの部分など、気持ちを伝えたい場所に使います。
ステップ1:宛先の一人を決める
最初の作業は、文章を直すことではなく、読んでほしい一人を決めることです。次の三つの問いに答えると、候補が絞れます。
- この企画を一番に知らせたい人は誰か
- 企画の話をしたとき、目を輝かせて聞いてくれた人は誰か
- その人が、このページを読んで「やってみよう」と動くとしたら、何がきっかけになるか
候補は、たとえば次のような人です。実在の誰かを思い浮かべるのがポイントですが、ページには名前を書きません。
| 宛先の例 | 思い浮かべる場面 | 書くときに大切にすること |
|---|---|---|
| いつも活動を見てくれている常連さん | お店や教室で、いつも声をかけてくれる人 | これまでの感謝と、これから一緒に見たい景色 |
| 遠くに住む旧友 | 久しぶりに近況を知らせるときの相手 | 企画の背景を、内輪の言葉を使わずに |
| 地域の先輩 | まちの歴史を知っている人 | これまでの積み重ねへの敬意と、新しい挑戦の意味 |
| はじめて企画を知る人 | SNSで偶然リンクを開いた人 | 最初の一文で、何をする企画かが伝わること |
一人に絞るのが難しいときは、「応援者の輪」で考える方法もあります。身近な家族や友人、活動を知っている常連さん、地域の知り合い、まだ出会っていない人、と分けたとき、最初に動いてくれそうな輪から一人を選ぶと、書き出しやすくなります。選んだ一人は、下書きの一番上にメモしておきます。
ステップ2:手紙の順番に並べ直す
宛先が決まったら、下書きを「手紙の順番」に並べ替えます。説明文は「企画の概要、目的、資金の使い道」と情報を整理した順に並びがちですが、手紙は相手との関係から話し始めます。次の順番を目安にしてください。
- 呼びかけ:相手との関係を一文で。「いつもありがとうございます」「ご無沙汰しています」など
- 報告:いま何を始めようとしているかを、一文で
- きっかけ:なぜ始めたいと思ったのか、具体的な場面を一つ
- お願い:相手にどう関わってほしいのか
- 結び:応援の方法、次に会うときの楽しみ
書き直しの例を見てみましょう。最初の下書きが次のような文だったとします。
「当団体は、地域の活性化を目指し、音楽を通じた交流の場をつくるプロジェクトを実施します。つきましては、みなさまのご支援をお願い申し上げます。」
これを、地域の先輩に宛てた手紙として直すと、次のようになります。
「いつも練習を見守ってくださって、ありがとうございます。実は、みんなが思い切り歌える場所を、公園につくろうと決めました。先日の発表会のあと、子どもたちが帰りたがらず、いつまでも歌っていたのを見て、思いが固まりました。力を貸していただけませんか。」
直したあとの文章には、誰に向けた言葉か、何を始めるのか、なぜ始めるのかが入りました。企画の中身は同じでも、読んだ人が情景を思い浮かべやすくなります。きっかけの場面は、実際にあった出来事を一つだけ選んで書きます。複数を並べるより、一つを丁寧に書いたほうが、気持ちが伝わります。
ステップ3:声に出して整える
手紙の形に直したら、最後に声に出して読みます。目で追うだけでは気づかない、言いにくい部分や、息継ぎの位置が見つかります。声に出して引っかかる箇所は、読む人にとっても引っかかる箇所です。次の観点で直していきます。
| 見直す観点 | よくある状態 | 直し方 |
|---|---|---|
| 一文の長さ | 一文の中に、理由と目的と依頼が全部入っている | 声に出して息が続かない場所で文を切る |
| 言葉の硬さ | 「〜において」「〜に資する」など、書き言葉が続く | 相手に話すときの言葉に置き換える |
| 主語の抜け | 誰がやるのか分からない | 「私たちは」「私は」を入れて、主語をはっきりさせる |
| 内輪の言葉 | 団体の中だけで通じる略称や呼び方 | はじめて聞く人にも分かる言い方にする |
| お願いの位置 | 最後まで読まないとお願いが分からない | 冒頭か、きっかけの直後に一度書く |
読む練習は、信頼できる人に聞いてもらうとさらに効果的です。聞いている人の表情が曇った箇所や、聞き返された箇所に、直すヒントがあります。公開前に第三者に読んでもらう方法は、ページを磨くレビューの記事でも紹介しています。
手紙の言葉を使う場所と、使い分け
ページ全体を手紙にする必要はありません。場所によって、向いている書き方が違います。使い分けの目安は次のとおりです。
- 冒頭と題名まわり:一文で何をするかが伝わる、短く力のある言葉。手紙の「報告」にあたる部分です
- 思いを語る部分:手紙の形がもっとも生きる場所です。きっかけの場面を入れて、一人称で書きます
- 資金の使い道、スケジュール、リターンの説明:事実を正確に伝える場所なので、箇条書きや表で整理します。手紙の温度は、見出しや結びの一文に少し添える程度にします
- お礼と結び:もう一度手紙の形に戻り、感謝と、これから一緒に見たい景色を書きます
この使い分けにすると、読む人は「気持ちを受け取る場所」と「確認する場所」を迷わず読み分けられます。気持ちの部分は手紙で、確認の部分は整理して書く、という切り替えが、読みやすいページの土台になります。
書き直しの確認表
文章を直したら、公開前に次の表で確認します。すべてに「はい」と答えられれば、手紙の形に近づいています。
| 確認すること | はい |
|---|---|
| 宛先の一人を、下書きの一番上にメモしてある | □ |
| 冒頭の一文で、何をする企画かが分かる | □ |
| きっかけの場面が、一つだけ具体的に書かれている | □ |
| 主語が、「私たち」「私」ではっきりしている | □ |
| お願いの内容が、一つに絞られている | □ |
| 声に出して読んで、つかえる場所がない | □ |
| 事実を伝える部分は、表や箇条書きで整理されている | □ |
とくに「お願いが一つに絞られている」は、見落としやすい項目です。応援の方法として、支援、拡散、見学、協力などを並べすぎると、手紙の温度が下がります。いま一番お願いしたいことを一つ決めて、ほかは結びで軽く触れる程度にします。
文章づくりも一緒に考える相談から
クラウドファンディング支援は、地域の団体、お店、音楽や舞台のつくり手に向けた伴走の支援です。代行ではなく伴走ですので、起案者さんが自分の言葉で語れるよう、質問に答えながら一緒に文章をつくります。物語と動画・音楽の準備では、手紙の言葉をページや動画に生かす方法も、ご相談いただけます。
実績として、伊豆山の野外ステージづくりでは、CAMPFIREでの2023年の募集で173人から1,000万円以上の応援が集まり、CAMPFIRE 静岡県まちづくりランキング2023年1位になりました。一人ひとりの思いがつながった事例です。
書きかけの下書きがあれば、そのままお持ちください。クラウドファンディング支援のトップページのお問い合わせフォームやLINEから、挑戦したいことと時期をお知らせください。オンラインで全国から、お話を伺います。