企画の絞り込み
やりたいことが複数あるとき、クラウドファンディングは最初の一つに絞る
やりたいことがいくつもあるのは、挑戦の種が豊かな証拠です。最初の一つを選ぶ視点と、残りの案を大切に育てる方法をまとめました。
やりたいことが複数あるときは、最初のクラウドファンディングで挑戦するのを一つに絞ると、ページの伝わり方が一気にまっすぐになります。残りの案は捨てるのではなく、次の挑戦の候補として順番を付けて持っておけば大丈夫です。この記事では、絞るための5つの視点と、残りの案の育て方を紹介します。
なぜ一つに絞ると伝わりやすいのか
クラウドファンディングのページを開いた人は、最初の数十秒で「これは何をする企画なのか」を判断します。CDをつくり、ライブを開き、さらに教室も始めたい、と並べると、どれも魅力的な反面、読む人は何を応援すればよいのか迷ってしまいます。迷った人は、応援のボタンを押す前にページを閉じてしまいがちです。
一つに絞ると、ページの物語にも一本の筋が通ります。なぜ始めるのか、誰に届けたいのか、支援があると何ができるのかが、一つの流れで語れるようになります。さらに、リターンの設計、紹介動画の台本、公開中の活動報告も、すべて同じテーマに揃うので、準備の手間が減ります。
最初の一つを選ぶ5つの視点
選ぶ基準は、「どれがいちばん大きな夢か」ではなく「どれがいま、いちばん届けやすいか」です。大きな夢は次の挑戦にとっておいて、最初は形になる日が見える案から始めるのも、立派な戦略です。
案が並んだら、次の5つの視点で一つずつ見ていきます。点数を付ける必要はなく、「はい」「どちらともいえない」「いいえ」で十分です。
| 視点 | 問いかけ |
|---|---|
| 届け先がはっきりしているか | この企画を喜んでくれる人の顔を、3人は思い浮かべられるか |
| 形になる日が見えているか | 完成や本番の時期を、ざっくりでも言えるか |
| 資金の使い道が書けるか | 必要な費用を項目に分けて書き出せるか |
| 自分の言葉で語れるか | 始めた理由を、友人に話すように説明できるか |
| 見せられるものがあるか | 写真、音源、試作など、今ある素材を見せられるか |
この5つを使うと、気持ちの強さだけでなく、準備の現実味も一緒に見られます。たとえば、いちばん思い入れのある案が「いいえ」ばかりでも、がっかりする必要はありません。「いいえ」の項目は、次に集める素材や、話しておきたい人の一覧になります。
「はい」が多い案ほど、準備が早く進み、ページも書きやすくなります。反対に「いいえ」が多い案は、今は種の段階です。育てる時間をとってから、次の機会に挑戦するほうが、応援してもらいやすくなります。
案を並べて書き出す手順
頭の中だけで比べようとすると、声の大きい案ばかりが目立ちます。紙を1枚用意して、次の手順で書き出してみてください。
- やりたいことを、思いつくまま一行ずつ書く(まだ評価しない)
- それぞれの横に、届けたい人を一言で書く
- それぞれの横に、形になる時期を書く(分からなければ空欄)
- 5つの視点で「はい」の数を数える
- 数が同じ案が残ったら、「応援してくれそうな人が今すぐ思い浮かぶ案」を選ぶ
最後の基準は、意外と頼りになります。クラウドファンディングは、最初の支援が身近な人から始まることが多いので、顔が浮かぶ案は動き出しも速くなります。
組み合わせたいときの考え方
絞るといっても、関連する案を無理に切り離す必要はありません。大切なのは、読む人が「この企画のゴールは何か」を一言で答えられることです。ゴールが一つなら、そこに向かう手段がいくつかあっても伝わります。
「CDをつくって、そのお披露目ライブもやりたい」のように、案同士がつながっているときがあります。この場合は、一つの流れとして語れるかどうかで判断します。CDの完成が目的で、お披露目ライブはそのお礼の場という位置づけなら、一つの企画として成り立ちます。一方、CDとライブとグッズ販売が、それぞれ別の目的を持っているなら、順番に分けて挑戦するほうが読み手には伝わりやすくなります。
組み合わせるか分けるかで迷ったら、企画を一文にしてみます。「私は、◯◯のために、△△をつくります」という形に、すべての案が収まるなら一つの企画、収まらないなら別の企画です。一文に収まらない部分は、リターンの体験として添える方法もあります。たとえばCD制作の企画に、完成を一緒に聴く会という体験を加えるといった形です。
残りの案を次につなぐ
選ばれなかった案は、「次の挑戦リスト」として残しておきます。リストには、案の名前、届けたい人、必要になりそうな準備、今ある素材の4つを書いておきます。こうしておくと、最初の挑戦が終わったときに、すぐ次の案へ移れます。
さらに、最初の挑戦で出会った支援者は、次の挑戦の最初の応援者にもなってくれます。報告やお礼を丁寧に届けておくことが、次の挑戦の土台になります。公開中や終了後の活動報告で、「次はこんなことを考えています」と軽く触れておくのも、関係を続ける自然な方法です。
伊豆山の野外ステージの挑戦は、ステージをつくることに絞ったプロジェクトでした。2023年の募集では173人から1,000万円以上の支援が集まり、その後、完成したステージで地域の人たちが出演するミュージカルが上演されました。ステージという一つの目的に絞ったからこそ、その先の物語につながったと見ることもできます。
絞ったことを周りに伝える
一つに決めたら、身近な人にも「今回はこれに集中します」と伝えます。ほかの案にも期待してくれていた人がいる場合は、「次の挑戦も考えています」と一言添えると、気持ちが伝わります。絞ることは、ほかの案をあきらめることではなく、順番を決めることだと伝えれば、応援してくれる人も安心します。
次の挑戦リストは、たとえば次のような表にまとめておくと見返しやすくなります。
| 案の名前 | 届けたい人 | 必要な準備 | 今ある素材 |
|---|---|---|---|
| CD制作 | これまでの聴き手 | 録音の日程、ジャケット | デモ音源、ライブの写真 |
| お披露目の会 | 支援者と地域の人 | 会場、当日の進行 | 候補の会場のメモ |
| 子ども向け教室 | 地域の保護者 | カリキュラム、場所 | 体験会のアイデア |
表の内容は、あくまで書き方の見本です。ご自身の案に置き換えて、空欄が多い部分があれば、それが次に集める素材の宿題になります。1か月に一度、リストを見直して、素材が増えた案から優先順位を上げていくと、次の挑戦の準備が自然に進んでいきます。
絞り込みを一緒に進める
案が多いほど、一人で決めるのは難しくなります。クラウドファンディング支援のご相談では、挑戦したいことと時期をうかがい、案を並べて、最初の一つを一緒に選んでいきます。伴走は代行ではなく、起案者ご自身が自分の言葉で語れるよう、質問を重ねながら進める形です。案が整理されていなくても、書き出したメモをそのままお送りいただければ大丈夫です。
相談の前に、気になる案を三つほど書いたメモと、いま手元にある写真や音源の一覧を用意しておくと、最初の打ち合わせから具体的な話ができます。
ご相談は、お問い合わせフォームまたはLINE(AtoNO Records)から、オンラインで全国から受け付けています。