リターン設計
リターンを公開前に試作する:手間・時間・届け方を試して決める四つの場面
リターンの案を考え終えたら、公開の前に一つだけ実際につくって、送って、使ってもらってみましょう。机の上の案が、届けられる約束に変わります。
リターンは、公開前に一つだけ試作しておくのがおすすめです。実際につくり、包み、送り、使ってもらうと、かかる時間と費用、届け方の工夫が一度に見えてきます。頭の中の案では気づけない発見が、手を動かすとすぐに出てきます。
この記事では、品物・体験・音楽やデータの三つのタイプ別に、試作のやり方と記録の取り方をまとめます。リターンの種類や金額帯を決める段階は、すでに進んでいる前提です。決めた案を「確かな約束」に育てる工程だと考えてください。
なぜ公開前に試作するのか
クラウドファンディングのリターンは、公開した日から支援者との約束になります。ページに書いた内容を、書いた時期に、書いた形で届けることが、応援してくれた人への一番のお礼です。
案の段階では、つくる時間も、材料を集める手間も、送る作業も、だいたいのイメージでしか捉えられません。試作をすると、イメージが「実際の数字と手順」に置き換わります。ページに書く説明文も、試作した経験から書いたほうが、具体的で読みやすくなります。
試作で見えてくることは、大きく四つあります。
- 一つあたりの制作時間と、材料や外注の費用
- 包む・箱に入れる・送り状を書くといった、届けるまでの手間
- 受け取った人の最初の印象(開けたとき、聞いたとき、参加したとき)
- ページに載せる写真や動画の素材
どれも、公開が始まってからでは余裕を持って取り組みにくいものです。公開前の落ち着いた時間に、一度ずつ確かめておくと安心して公開日を迎えられます。
試作の前に決めておく三つのこと
試作は、ただつくってみるだけでも発見がありますが、次の三つを先に書き出しておくと、結果をそのままページづくりに生かせます。
1. 試すリターンを選ぶ
すべてのリターンを試す必要はありません。まずは「いちばん支援が集まりそうなもの」と「いちばん手間がかかりそうなもの」の二つを選びます。人気になりそうなものは数が多くなるので、手順のわずかな違いが全体の負担に響きます。手間がかかりそうなものは、早めに現実の姿を知っておくほど、数量や時期の決め方が楽になります。
2. 見たいことを書き出す
「何分かかるか」「材料はいくらか」「箱に入るか」「相手が喜ぶか」など、見たいことを試作の前にメモしておきます。つくっている最中は作業に夢中になるので、先にメモがあると記録を取り忘れません。
3. 受け取り役を二人決める
試作したものを受け取って感想を聞かせてくれる人を、できれば二人お願いします。一人は企画をよく知っている身近な人、もう一人は企画をほとんど知らない人です。後者の感想は、初めてページを見る支援者の目線にいちばん近いものになります。
タイプ別・試作のやり方
リターンの形によって、試すポイントが変わります。次の表を目安に、自分のリターンに近いものから読んでください。
| タイプ | 試作でやること | 見えてくること |
|---|---|---|
| 品物(グッズ・地域の品・CD など) | 一つをつくり、梱包して、実際に送ってみる | 制作時間・材料費・箱の大きさ・送る手間 |
| 体験(見学・ワークショップ・ミニ演奏など) | 身近な人を数人招き、当日の流れを通しで行う | 所要時間・人数の上限・準備物・案内の分かりやすさ |
| 音楽・データ(録音・動画・メッセージ) | 一つを仕上げ、受け取る側の端末で再生してもらう | 制作の手順・ファイルの渡し方・再生のしやすさ |
| お礼の手紙・お名前掲載 | 一通書き、名前の入れ方まで通しで試す | 一通にかかる時間・宛名の集め方・読んだ印象 |
品物のリターン
品物は、つくるところから送り終えるところまでを一回通します。ポイントは、完成した瞬間で終わらせないことです。完成品を実際の箱や袋に入れ、送り状を書き、郵便局や配送の窓口まで持っていくところまで試してください。窓口で重さを量ってもらうと、送料の目安もそのまま分かります。
つくる工程では、時計を横に置いて、材料をそろえる時間・つくる時間・仕上げて包む時間に分けて記録します。慣れると速くなるので、最初の一つにかかった時間は、少し長めの目安として使うと安全です。
体験のリターン
体験は、当日の流れを通しで一度行うのが近道です。家族や仲間に参加者の役をお願いして、案内を出す、集まる、迎える、始める、終える、見送るまでを実際の時間どおりに進めます。
見ておきたいのは、次のような点です。
- 案内文だけで、集合場所と持ち物が伝わるか
- 説明の時間と体験の時間のバランスはよいか
- 何人までなら目が届くか(人数の上限の目安になります)
- 待ち時間や移動の時間が長すぎないか
音楽・データのリターン
録音や動画、メッセージなどのデータは、完成させてから、受け取る側の目線で再生してみるのが大切です。自分のパソコンで問題なく聞けても、受け取る人のスマートフォンでは開き方が分からない、ということがあります。
試作では、次の三つの動きを試します。
- つくったデータを、実際に渡す方法(メール、ダウンロード用のリンクなど)で送る
- 受け取り役の二人に、自分のスマートフォンで開いてもらう
- 開くまでにつまずいたところを聞き取り、案内文に書き足す
試作の結果を記録する:一枚の表にまとめる
試作で分かったことは、その場で一枚の表に書き留めます。後から見返してそのままページ作成や数量の検討に使えるよう、項目をそろえておくと便利です。次のような表を、手書きでも表計算でも構いませんので、自分用につくってみてください。
| 項目 | 記録すること |
|---|---|
| リターン名 | ページに載せる予定の名前 |
| 制作時間 | 材料の準備・制作・仕上げに分けた時間 |
| 材料費・外注費 | 一つあたりの金額(レシートや見積りを手元に) |
| 梱包・送料 | 箱や袋の費用と、窓口で確認した送料 |
| 受け取り役の感想 | 良かった点と、分かりにくかった点をそのままの言葉で |
| 直すこと | 次につくるまでに変える点 |
| ページへ反映 | 説明文・写真・数量・お届け時期のどこに生かすか |
この表の「材料費・外注費」と「梱包・送料」は、目標金額を積み上げるときの根拠にもなります。目標金額の考え方は「クラウドファンディングの目標金額の決め方」でも紹介していますので、試作で得た実際の数字を重ねてみてください。
結果をページと設計に生かす
記録が取れたら、次の二か所に反映します。
説明文を具体的にする
試作で触れた手触りや、受け取り役が最初に口にした言葉は、そのままリターンの説明文の材料になります。「手のひらに収まる大きさです」「開けると最初に手紙が見えます」など、実際に見た景色を書くと、読む人が受け取る場面を思い浮かべやすくなります。
数量とお届け時期を決める
一つあたりの制作時間が分かれば、「公開終了から発送まで何週間あれば足りるか」を計算できます。余裕を持った時期を書くと、支援者は安心して待てます。数量の上限の決め方は「リターンの数量と上限の決め方」、届く時期の書き方は「リターンの届く時期の書き方」に詳しくあります。
試作を無理なく進めるスケジュール
公開日の90日前から準備を始める目安からすると、リターンの試作は設計がまとまった頃、つまり公開の2か月前から1か月前のあいだに置くと余裕があります。ページの文章や動画の準備と並行して進められ、試作で分かったことを最終のページに反映する時間も残ります。
一人で進めるのが難しいときは、準備を一緒に整理する伴走の相談もご利用いただけます。クラウドファンディング支援では、リターン設計をはじめ、プロジェクト設計、物語と動画・音楽、広報までを、公開前から報告まで伴走しています。試作の結果を持って相談に来ていただくと、リターンの見せ方をその場で一緒に整えられます。
試作から始める、最初の一歩
挑戦を形にする最初のご相談は、お問い合わせフォームまたはLINEからお気軽にどうぞ。オンラインで全国から対応しています。
よくある質問
試作はすべてのリターンでやらないといけませんか。
すべてではなく、支援が集まりそうなものと、手間がかかりそうなものの二つから始めるのがおすすめです。残りのリターンは、その二つで得た時間と費用の感覚を目安に決められます。
試作品は支援者に届けるものとして使えますか。
仕上がりが十分なら使えます。ただし試作の目的は流れと数字を知ることなので、改善を重ねた完成版を改めてつくると、より納得のいく形で届けられます。
受け取り役にはどんな人がよいですか。
企画をよく知る身近な人と、ほとんど知らない人の二人がおすすめです。後者の感想は、初めてページを見る支援者の目線に近く、説明文を磨く手がかりになります。
試作の相談はできますか。
はい、お問い合わせフォームまたはLINEから、挑戦したいことと時期をお知らせください。リターン設計も含めて、公開前から報告まで伴走しています。