リターン設計

演奏をリターンにする:ミニ演奏の動画と、名前を呼ぶ一曲のアイデア

 文:CROWDFUNDING SUPPORT 編集部/監修:たーなー先生(田中直人)

音楽のつくり手には、演奏という特別なリターンがあります。無理なく届けられる形と、準備の順番を紹介します。

音楽のつくり手がクラウドファンディングのリターンを考えるなら、自分の演奏そのものを届ける形がいちばん気持ちの伝わる選択肢です。物を作って送るのと違い、演奏は、準備さえ整っていれば、つくり手が持っているもので届けられるからです。この記事では、ミニ演奏の動画、お名前を呼ぶ一曲、ご招待の三つの形と、無理なく続けるための準備の順番を紹介します。

演奏がリターンに向いている理由

支援する人は、物を受け取りたいから支援するとは限りません。応援しているつくり手から、自分に向けた何かが届くことを楽しみにしている人も多くいます。演奏は、まさにそれにあたります。

演奏のリターンには、三つの良さがあります。ひとつは、つくり手の個性がそのまま出ることです。ふたつ目は、製造や在庫がないので、数量の調整がしやすいことです。三つ目は、届けるときに支援者への気持ちを乗せられることです。

一方で、時間のかかるリターンでもあります。一人ひとりに演奏を届けるなら、人数が増えるほど準備が必要です。無理のない数量を最初に決めておくことが、続けやすさにつながります。数量の決め方は、「リターンの数量と上限の決め方」の記事でも紹介しています。

三つの形から選ぶ

形中身準備の目安向いている企画
ミニ演奏の動画短い一曲を撮影して、限定の動画で届ける全員分を一度にまとめて撮影できる人数が多くなりそうな企画
お名前を呼ぶ一曲支援者のお名前や言葉を入れて演奏する一人ずつ準備が必要数量を絞った特別なリターン
ご招待完成後の演奏会や発表会にお招きする日程と会場の調整が必要会場や舞台をつくる企画

三つの形は、金額帯に分けて並べると選びやすくなります。入口の金額帯にミニ演奏の動画、中心の金額帯にご招待、特別の金額帯にお名前を呼ぶ一曲、という並べ方が考えられます。三段で並べる考え方は、「リターンの金額帯の考え方」の記事で紹介しています。

ミニ演奏の動画を届ける手順

動画は、スマートフォンで撮影した短いものから始められます。大切なのは、きれいに撮ることよりも、支援者に向けて演奏していると感じられることです。

  1. 演奏する曲を決める(企画に関係のある曲や、オリジナルの一節がよい)
  2. 冒頭に、支援へのお礼のひと言を入れる
  3. 演奏は、一曲まるごとでなくても、ワンコーラスで構わない
  4. 撮影は静かな場所で、音がこもらない向きを探す
  5. 公開は、支援者だけが見られる限定の形にする

撮影の段取りは、「動画撮影当日の段取り」の記事で、撮る順番と持ち物を紹介しています。音が出せない場所でも伝わるように字幕を入れる工夫は、「音が出せない場所でも伝わる動画に」の記事が参考になります。

撮った動画は、リターンとして届けるだけでなく、公開中の発信にも活用できます。一部だけを切り取って投稿し、「支援すると全編が見られる」と伝えると、ページへの導線になります。

お名前を呼ぶ一曲の考え方

お名前を呼ぶ一曲は、特別感が大きい分、準備に手間がかかります。数量を絞り、いつまでに届けるかを先に決めておきます。

進め方の一例は、次のとおりです。

  • 支援のあとに届くアンケートで、お名前の読み方と、添えたい言葉を聞く
  • 曲の中に入れる言葉は、一言か二言にそろえる
  • 演奏は、一人ずつ録音するか、ライブで読み上げる形にする
  • 届ける前に、お名前の読み方をもう一度確かめる

お名前を扱うリターンは、掲載や読み上げを希望しない人にも配慮します。「お名前を呼ぶことを望まない場合は、お知らせください」と添えておくと、安心して選んでもらえます。名前を載せる企画の考え方は、「支援者のお名前を載せる企画」の記事で紹介しています。

お名前を呼ぶ一曲は、つくり手にとっても、支援者一人ひとりの顔を思い浮かべる時間になります。数を絞ることで、一曲ずつ丁寧に向き合えます。

ご招待を、演奏のリターンに加える

完成した会場や、練習の場に支援者をお招きするご招待は、演奏のリターンの中でも、支援者の記憶に残りやすい形です。ステージや会場をつくる企画なら、完成後の演奏会や見学会に招くことで、支援した成果を自分の目で見てもらえます。

伊豆山の野外ステージでは、2023年のクラウドファンディングで173人から1,000万円以上の支援が集まりました。完成したステージでは、2025年11月に地域の子どもから大人までが出演するミュージカルが上演されています。支援の先に、集まれる場面があることは、企画に大きな意味を与えます。

ご招待の準備では、次の点を決めておきます。

  • 会場の収容人数と、招待する人数の上限
  • 日程の決め方(支援者の都合を聞くのか、先に決めるのか)
  • 当日の受付と案内の担当
  • 来られない人への代わりの届け方(演奏の動画など)

来られない人への代わりの届け方を用意しておくと、遠方の支援者も取り残されません。オンラインで全国から応援してもらう企画では、とくに大切な考え方です。当日の進め方は、「体験型リターンの当日の進め方」の記事も参考にしてください。

演奏のリターンを準備する、週ごとの目安

公開前の準備期間に、演奏のリターンの下ごしらえを進めておくと、公開中は発信に集中できます。準備は次の順番が進めやすい形です。

時期やること仕上がりの目安
公開の二か月前曲と形を決める。試しに一本撮影する見本の動画が一本ある
公開の一か月前見本を家族や仲間に見てもらい、直す撮影の手順が固まっている
公開の直前ページに載せる試聴と説明文を整える説明文に四点がそろっている
公開中撮影の予定をカレンダーに入れる終了後に撮る日が決まっている

見本の動画があると、ページでリターンの中身を具体的に見せられます。また、撮影にかかる時間が分かるので、数量を決めるときの根拠にもなります。リターンを公開前に試作して決める考え方は、「リターンを公開前に試作する」の記事で紹介しています。

届ける時期とページの書き方

演奏のリターンは、届く時期をはっきり書くことが安心につながります。動画は公開終了の翌月ごろ、お名前を呼ぶ一曲はその次の月ごろ、ご招待は完成後というように、種類ごとに時期を分けて書きます。説明文は、名前・中身・届く時期・数量の四点をそろえます。

ページには、演奏の短い試聴を置くと、リターンの中身が一目で伝わります。音源をページに置く工夫は、「音源の試聴をページに置く」の記事で紹介しています。

相談してみませんか

crowdfunding-support.net は、音楽や舞台のつくり手、地域の団体、お店のための伴走支援です。リターン設計では、体験や地域の品に加えて、つくり手ならではの演奏の届け方も一緒に考えます。数量や時期の決め方、動画の撮り方まで、公開前から準備を進められます。

相談はお問い合わせフォームかLINEから、オンラインで全国から受け付けています。crowdfunding-support.net のトップページから、挑戦したいことと時期をお知らせください。

よくある質問

演奏のリターンは、人数が多くなったときは、どう進めればよいですか。

ミニ演奏の動画のように、まとめて撮影して全員に届けられる形なら人数が増えても進められます。お名前を呼ぶ一曲のような個別の形は、数量を絞って設定します。

動画の出来栄えに自信がないときは、どうすればよいですか。

撮影のうまさより、支援者に向けて届ける気持ちが大切です。短い一節から始めて、お礼のひと言を添えると、気持ちが伝わります。

ご招待に来られない支援者には、どう届ければよいですか。

演奏の動画や、当日のようすを伝える活動報告を用意すると、遠方の方にも届きます。